今月の健康管理
ポメ目次 2005年分
2005年12月12日号:今年一年本当にありがとうございました
2005年11月9日号:冬に向けての準備について
2005年10月7日号:秋になっても外部寄生虫(ノミ・マダニ)に御注意
2005年9月16日号:健康保障共済制度の取扱いを開始しました
2005年7月26日号:梅雨明け二十日間は猛暑対策
2005年7月 1日号:梅雨の季節を爽やかに過ごそう
2005年5月23日号:シャンプーは適切なものを選びましょう
2005年4月19日号:春の狂犬病ワクチンとフィラリア検査・予防の季節です
2005年3月17日号:カリフォルニア州立大学セミナーから帰ってきました
2005年2月15日号:歳時記・早春の季語「猫の恋」
2005年 1月27日号:犬も震える寒の内
2005年 1月 1日号:あけましておめでとうございます

2004年へ

2006年へ
2005年12月12日号
今年一年本当にありがとうございました

12月に入り、日を追う毎に寒くなりました。なんだか今年は、急に冬が来たように思えます。今年一年間いろいろとお話ししてきましたが、季節毎の健康管理もしっかりとご理解戴けたでしょうか?

振り返ってみますと、夏のノミや、感染症対策もしました、暑さや寒さへの対策もしました。気になっていたあの事この事も大方済ませました。これでもう後はお正月を待つばかりですね。

さて、一年の最後に何をお話ししましょうか。「こころ」の御話はどうかな?
ときおり同級生の集まりや、中学生の体験学習の折に聞かれる質問があります。「犬や猫以外には、どんな動物が病院には来るのですか?」と・・・。そんな時僕はこう答える事にしています。
「そうですねえ、これは動物の治療ではないのですが、『とにかくこの辛さを先生に聞いて欲しいんです。』といった家族の人達や、すこし看病で気持の疲れちゃった飼い主さんも来るかな。」 
これは勿論、ウイットとユ−モアのつもりで答えているのですが・・。

亡くなった子のお話をされにお見えになる方も有ります。私が表の花壇で花の手入れをしていますと、立ち寄られて昔飼っていた動物のお話をしみじみとなさって行かれる方もおいでです。

 最近では急速に少子化と核家族化が進みました。経済的な余裕とも相まって、ペット(伴侶動物)に生活の潤いを求める傾向が強まって来たようです。新聞報道では、多くの中高年齢層の方が老後はペットを伴侶として暮してゆきたいと願っているそうです。

人生観や動物の命に対する法律にも変化が起こってきました。人医学の発展とともに動物医療への大きな期待もあります。そしてインターネットによる情報の氾濫により、動物とどう暮したら良いのか、時に迷われる方もお見えです。 

私達、さわき動物病院では、飼い主さんたちの心の負担にもお答えできるように努めて参ります。
病院のモットーでもある、愛情深い看護、穏やかな治療態度をいつも 心がけます。飼い主の皆様と共に、さわき動物病院スタッフ一同、今年一年無事すぎた事を感謝します。また、大変だった事、本当に辛かった事も、しっかりと心に刻み付けて新たな年に向かっていこうと思います。
今年も一年、本当にありがとうございました。また来年も宜しくお願い致します。皆様に心からの感謝を込めて・・・。

 

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2005年11月9日号
 冬に向けての準備について 

11月になりました。秋も深まり、日によっては随分肌寒い日もあります。

日本は世界中でもめずらしい気候の変化に富んだ四季のある国です。日本は大陸の砂漠や極地(南極や北極)地方のような厳しい気候ではありません。「穏やかな日本に生まれて良かったなあ。」と皆さんも感じませんか?
日本全体が「世界の自然遺産」そのものだと私には思えます。

こんな素敵な日本ではありますが、気候の変化(日照時間・気温・湿度)は私たち生き物に、時には生存に関わるほど大変な事態を引き起こします。また地球温暖化が事を複雑にしています。夏の暑さも厳しくなりましたが、以前に較べてここ数年気候が唐突に変る感じがします。

こうした気候の変化は、特に体温調節や代謝の不安定な幼児期や老齢期の動物、さらに重い疾患に罹った動物には適応してゆくのがとても難しいのです。

また、人とともに暮す歴史が長かった犬や猫たちはその「伴侶化」ゆえに「野性」を失って人間の保護なしでは生きていけなくなりました。

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さて前置きが長くなりましたが今日のテ-マ 「冬に向けての準備について」お話しいたしましょう。

以前なら11月に入りますと「文化の日」を境にして木枯しが吹き、それまで大変だった蚊やノミといった昆虫類も絶えて居なくなったものでした。近頃では、用水路に近い住宅地や庭の池、さらには小さなバケツでも遅くまで蚊の発生があります。

そんなことから、

1)どうか犬フィラリア予防を最後までお忘れなく。(平均気温が15℃以下で、蚊が見られなくなった後に「最終の投薬」をして終了します。)

2)ノミダニ退治予防は、暖かな室内飼育の動物、特に外へ出掛けるネコさんの居るお家では冬の間も注意しましょう。

3)また秋から冬にかけても動物たちの体は清潔に、シャンプーは3週間から1ヶ月に一度位致しましょう。(但し皮膚疾患で頻繁な治療の必要な患者さんはまた別です。)

(耳が匂う。分泌物が有る。)(床に降ろすと歩く時にカチャカチャ音がします。お年寄りのネコは爪とぎをしなくなる傾向が有ります。)肛門腺(お尻を床に擦り着ける。くるくると回る。)の手入れも忘れずに。

また日光浴、外気浴は皮膚の健康にとても役立ちます。お天気の良い日の午前9時から11時ぐらいまでのうち30分ほどでよろしいから外へ出してあげましょう。


次には、冬の低温と乾燥です。これらは呼吸器感染症・伝染性疾患の発生要因です。

4)本格的な寒さが来る前に予防接種(混合ワクチン)を致しましょう。

極度な寒さは歳が明けて一月に入ってからと思いますが

5)保温と加湿、できれば空気清浄機があると良いと思います。

最後にもう一言。一見すると大したこと無さそうだけど、

6)「今年になってチョッと気になっていること」があれば早めに解決しましょう。

例えば
  1.小さな腫瘤(こぶ)がある。(乳腺、睾丸、首、耳介など)

  2.天然孔に分泌物や出血がある。

  3.排尿や排便時に僅かな出血がある。

  4.時折り吐き気が有る。

  5.少しだけ痩せた、太った。

  6.1度だけ以前に倒れた。ひきつけた。

  7.多飲(よく水を飲む)。
    多尿(尿が多い・頻繁にする)がある。

  8.夜半または運動時にだけ咳のようなしぐさをする。

  9.口が少し臭い、歯が抜けた。

  10.運動時の跛(は)行(びッこを引く)や、早朝の運動        が出来なくなった。

 などです。どれも見つけた時には早めの対処が肝心です。多くの疾患はその原因が複雑なこともあり検査が必要な時が有ります。

病気を怖がったりためらったりせずに遠慮なく私たちにご相談下さい。きっと解決のお役に立てると思います。

この次は、12月。今年最後の「今月の健康管理」です。どんなお話になりますかまたお楽しみに・・・。

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2005年10月7日号 
秋になっても外部寄生虫(ノミ・マダニ)に御注意

10月に入りました。強かった日差しも少しずつ和らぎ朝夕は随分と過ごしやすくなりました。今年は残暑が厳しかったせいか、または冬に備えての昆虫類の活動が活発なせいなのか、ノミやマダニの皮膚疾患がいまだに続いています。
動物たちに害を与えるノミ・マダニやシラミといった、犬、猫、小鳥、うさぎたちの外部寄生虫は夏の終わったこの時期に特に繁殖します。症状はおもに病害虫の「刺ばん」による「皮膚炎」(痒みや発赤)です。猛烈に痒がる場合も、ウヨウヨとノミが居ても全く平気な動物も居ます。

なかには「ノミ」の姿が見当たらないのに皮膚病の原因は「ノミ」であったという事もあります。これは生活環境に「ノミ」が増殖している場合や、同居のネコないし犬の持っている「ノミ」が時折りやってきてその時だけ吸血する場合があります。

また、お腹の虫(消化管寄生虫)もノミによって感染します。ウリザネ条虫といいます。ウンチやお尻の周りにピンクや白い「キュウリの種」のように見える虫が付着します。それでその形から「瓜実条虫」と呼びます。 

「マダニ」は5ミリから1センチぐらいの黒褐色の虫です。特に犬の鼻先や腋の下に付着しています。良く見ると「口器」が皮膚に刺さっており脚がモゾモゾと頭の直ぐ下で動いています。無理に引き千切って、この口器が皮膚内に残りますと激しい皮膚炎が起こります。

動物の体にもし何か虫を見つけましたら無理に摘んだり取り除いたりせずに、当院の方へそのままお連れ下さい。

 ごく稀にですが、犬はダニから血液寄生虫が感染して激しい貧血や黄だんを起こす場合があります。

またウサギや小鳥にもダニとシラミの感染が、鶏にはのみがよくあります。

ウサギでは耳の内側に多く、小鳥は羽毛の中やくちばしの周り、足や爪にもダニが見つかります。殆んど肉眼では見えませんが、顕微鏡下ではちゃんと見つかります。

このように皆さんが名前は良く知っている「ノミ」や「ダニ」ではありますが、病気の診断治療については私たちにお任せ願ったほうが宜しいと思います。

ではこの次は、冬に備えて秋のうちになさっておくべき事をお話しいたしましょう。では又次回に・・・

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  2005年9月16日号  
健康保障共済制度の取扱いを開始しました

今回は健康管理とは少し違うかも知れませんが、最近の『動物の健康保障共済制度(健保)』について少しお話ししましょう。

 「動物は保険が利かないから、治療費がとてもかかるのよねえ。」
「国民健康保険の扶養家族欄に1頭で良いからワンちゃん・ネコさんの項目があったらいいのにねえ。」

私が小動物獣医師として仕事を始めた頃から、飼主さんがこのようなことを言って嘆かれるのを良く聞きました。過去にはペットショップによる動物の保険とか、人の損害保険に付随して交通事故に遭った動物への保険金の支払いが数件はありましたが、本格的な診療費を補てんする健康保障制度はありませんでした。

今日では、動物たちは本当に家族の一員となリました。飼い主さんの動物医療の意識は驚くほど向上しました。飼っている動物の具合が悪くなった時に、動物病院にかからないほうが今ではまれな時代となりました。一方では、「動物医療」が大変高度でかつ複雑化しました。血液検査、レントゲン撮影、超音波診断、外科手術といずれも費用の面から考えれば高額な処置が並びます。何頭も動物がいたり、大型犬を飼っているお宅にとっては、診療費の高額化は大きな問題となってきました。

このような皆さんの要望を受けて、『動物の健康保障共済制度(健保)』が現在ではできました。こうした新しい健保は、支払われる対象となる疾病も広範囲になりました。会社の規模も資本力も格段に大きくなりました。以前よりは安心して加入できる状況と思います。

そこで、さわき動物病院では、9月から本格的な『動物の健康保障共済制度』の取り扱いを始める事にいたしました。私たちはこれにより飼い主様の経済的な負担が幾らかでも軽減されればと考えています。

勿論ご請求する診療費は、今までどおりです。健保診療の適用の場合も、適用で無い場合も、全て規定の診療費計算をいたしております。尚、詳しい説明をご希望な方は受付までお申し出下さい。

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2005年7月26日号
梅雨明け二十日間は猛暑対策

梅雨が明けました。梅雨明けから二十日間は、一年で最も暑い日々が続きます。昔は「大祓い」といって水辺で禊をしたり、「ものいみ」をして野外の活動を控えたそうです。体力の消耗を避けて静かに暮すように心掛けていました。こうした古代人の知恵は現代の私たちにも、また動物達にも当てはまることではないでしょうか?
夏休みだからといって犬たちに急に激しい運動させたり、炎天下にシャンプーをしたり、動物を車の中に放置したりといった事は思わぬ事故につながります。
また食事の注意、生活環境の整備などの、「夏の健康管理」をおろそかにしてはいけません。

<食事の注意>
朝夕の食事時間は外気温の低い時間(朝なら6ー8時・夕方は7時以降)に与えましょう。また腐敗の心配の有る水分の多い物は1ー2時間で引き上げるようにしましょう。新鮮な水を十分に与えましょう。
また夏は食事の偏りがちな「ウサギや小鳥たち」に、新鮮な果物や野菜を与え始めるよいチャンスでも有ります。但し鳥たちに『アボガド』は与えないで下さい、毒物です。
犬・猫たちの塩分補給は、ドッグフード・キャットフード中心であれば必要ありません。家庭食の場合もほとんど必要ありません。むしろ心臓病の場合は塩分制限が必要です。ウサギ・小鳥では「塩土」を購入されてケージに入れておきましょう。


<生活環境の注意>
室内でも閉め切った部屋では40度から50度にもなる場合があります。特に短頭犬(パグ・シーズー・フレンチブルドッグ・ポメラニアンなど)では呼吸困難になる事が有ります。換気不足や湿度の高い部屋は危険ですので注意しましょう。
また、ウサギや小鳥を飼って見える方は別の注意が必要です。-ジで動物を飼育なさっている場合、(特に受け皿の深い場合)排泄物による敷物やスノコの汚れが、アンモニアや有害ガスの発生を惹き起こします。汚れた空気は多くの病気を誘発します。

これから秋までの1-2カ月間、特に老齢動物は体力の消耗を避けた静かな生活に心掛けてください。

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  2005年7月1日号   
梅雨の季節を爽やかに過ごそう


梅雨の季節です。長雨と高い湿度は犬達や猫たちには少々つらい季節となりました。急な夕立や雷におびえる動物もいます。


では梅雨時にはどんな点に気をつけたら良いのかお話を致しましょう。

先ず雨のためにお散歩ができず、排泄と運動に困る季節です。特に神経質な柴犬などの日本犬や室内犬では散歩中でないと排泄をしない子がいます。そのため膀胱炎が起こってしまったり、胃腸障害になったりする場合があります。
大型犬や運動量の多い猟犬タイプの犬達は運動不足から攻撃的になったりします。
肥満が増悪して肝臓疾患や関節疾患が現われ易くなったりもします。
さらには梅雨の晴れ間に気温が急に上昇する日があります。そんな時には、心不全(心臓疾患)や犬フィラリア症が急速に悪化することがあります。
雷や夕立におびえる犬達には静かな環境や、時には鎮静剤による不安の解消が必要な時があります。

 猫さんたちでは、呼吸器感染や下部尿路疾患(尿路閉鎖症)が急に増えます。外出の出来ない環境が悪化に拍車をかけていると思います。現在もしくは過去に排尿困難や血尿といった下部尿路疾患の症状があったり、この病気で入院経験のあるオス猫は注意しましょう。

犬・猫に限らず、ノミ・ダニによる皮膚炎、細菌性の皮膚炎、アトピーやアレルギー性皮膚炎といった皮膚疾患が悪化しやすい季節でもあります。シャンプーや被毛の手入れに心がけて皮膚疾患を予防しましょう。

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2005年5月23日号
シャンプーは適切なものを選びましょう
やや今年は涼しい日が続いていましたが、晴れた日はもうすっかり初夏の気候です。

今回は、天気のよいお休みには、自宅でできる動物たちのシャンプーについてお話し致しましょう。

 さて、気温が上昇してきますと皮膚の新陳代謝が活発になります。特に犬達は散歩や野外で遊ぶ事の多い季節になります。体毛の汚れも目立ってきます。猫さんも砂遊びを楽しみにしています。またノミやダニの発生も盛んになってきます。シャンプーは皮膚病がある動物の治療にはもちろんの事ですが、動物たちの健康な皮膚の状態を保つためにもとても大切なのです。現在、当院では10種類ほどの薬用シャンプーが準備されています。例を挙げればキリが有りませんが、

1)硫黄系(脂漏体質・ダニ・疥癬)
2)タール系(脂漏体質・カビ性皮膚炎)
3)クロル・ヘキシジン系(細菌性皮膚炎)
4)ポピドン・ヨード系(細菌性・カビ性皮膚炎)
5)カモミール・オイル系(かゆみ・アレルギー性皮膚  炎)
6)パーオキシベンゾイル系(ほとんどの皮膚炎・特に 細菌・カビ・ダニ性皮膚炎)

等があります。20年ほど昔には「動物用・薬用シャンプー」といえば、強烈な匂いと緑色の鮮やかな硫黄系二硫化セレン「セリーン(
TM)・グリーンシャンプー」だけでした。現在では皮膚病治療学も格段の進歩を遂げました。そして「シャンプーによる治療法」が独立して語られるようになりました。

前述のようなシャンプーの使い分けをしますが、詳しくは診療の際に先生の指示に従ってください。

尚、リンス・コンディショナーの使用については、それぞれの病気や被毛の状態によって違いますので、これもお尋ねください。

最後に、乾燥はドライヤーを使ってもよろしいし、タオルによる丁寧な拭き上げもよいと思います。ただしかゆみのある場合は、少し低温で乾燥するとよいと思います。シャンプーのあとは、体力を消耗していますので、充分休養をさせてください。特に心臓疾患・老齢の動物には注意をしましょう。

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2005年4月19日号
春の狂犬病ワクチンと        
   フィラリア検査・予防の季節です

暖かくなりました。陽気も緩んで、春らしい毎日です。

すでに皆さん良くご存じとは思いますが、「春の狂犬病ワクチン・フィラリア検査と予防」の季節です。一概に予防と言いますが、それぞれどのようなものなのか、またこの時期に一緒になさっておくと宜しい事柄についても、詳しくご説明致しましょう。主に次の様なものが有ります。

1)「狂犬病予防ワクチン」

2)「犬フィラリア症血液検査と予防」

3)「高齢犬・猫の検診(身体一般検査・血液生化学検査)」

4)「猫フィラリア症血液検査と予防」

5)ノミ・ダニ・寄生虫予防・駆除

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1)「狂犬病予防ワクチン」

狂犬病という言葉をご存じ無い方は殆んどいないと思います。「恐水病」とも呼ばれ、昭和の中期までは日本でも発生した、神経を侵すほぼ「致死的な」極めて危険な感染症です。一頃「日本に狂犬病は無いのだから、もう予防注射はしなくても良いんじゃないか?」と言った議論がされたことも有ります。しかし昨年には鳥インフルエンザの発生がありました。また航空機・船舶による国際交流・物流の発展はめざましいかぎりです。如何に簡単に近隣諸国から危険な病気が入って来るのか、皆さん良くご存じと思います。幸い我が国の狂犬病予防体制は良く整っており現在も維持されています。社会生活での「健康と安全」のためにも、必ず予防接種を受けて下さい。

 

2)「犬フィラリア症血液検査と予防」

最近、重症のフィラリア症の犬を診る事も随分少なくなりました。これも皆さんの、犬フィラリア症に対する予防意識向上が有っての事と思います。とても素晴らしい事です。しかし犬フィラリア症は無くなった訳では有りません。むしろ、温暖化現象により、蚊の飛翔吸血する期間は長くなりました。4月、気温15度をこえた時から、11月〜12月の初冬まで予防が必要な時代になりました。そして犬のフィラリア症予防薬を飲み始める前には、必ず血液検査をお受けください。前年の予防薬の飲み忘れや、幼犬だった為に初年度予防が出来なかった場合は特に慎重な検査が必要です。「血液検査」と聞くと動物が暴れたりしないかと心配される方もあると思います。当院の看護士は動物の扱いに習熟しておりますので、「保定」は無理に押さえつけないで看護士に是非ともお任せ頂きたいと思います。 


3)「高齢犬・猫たちの検診について(身体一般検査・血液生化学検査)」

動物たちは私たち人間に較べて、一般に寿命も短く、言葉を話す事も出来ません。長く生きられる犬達や猫さんでも、20年前後が限界と思います。8〜10歳(大型犬は7歳位)に成った頃から『お年寄り』の仲間入りをします。東洋医学では、「未病」と呼んで、「病気未だ至らざる内に治して行く。」のが『上医』の要諦とされます。これにならえば、小さな変化や見えない内科疾患を身体一般検査や血液生化学検査をして症状の現れる前に治療していくのが良いと言えます。 

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<完全血球計算・血液生科学検査とは、>

ヒトの病院で血液検査をお受けになった方なら「白血球数が多く、血小板数が少ないです。」とか、「血糖値は良くなりましたが、まだ肝臓の数値が高いですね。」「現在、腎臓機能の障害が心配されます。」などと、お聞きになった事が有ると思います。この検査は血液を分析する機械により、血液中に含まれる成分から病気に関わる異常を、数値に表すものです。

4)「猫フィラリア症血液検査と予防」

猫フィラリア症が有る事は一般には余り知られていません。症状は犬とは違い間歇的な嘔吐(吐き気)や突然の呼吸困難、そして突然死です。およそ5%の猫が感染するといったデータがあります。この猫で5%感染(野外犬での予防しない場合90%以上)を高率と見るかどうかは心配なさる飼い主さんによると思います。猫さんも血液検査の後、フィラリア予防薬を飲みます。投薬期間は犬と同じ4月から11〜12月です。

5)ノミ・ダニ・寄生虫予防・駆除

気温の上昇に伴って、ノミやダニが発生します。一般には気温15ー20度で発生すると言われますが、真夏よりも初夏や、残暑の頃のほうが来院が多く診られます。現在では大変に安全で効果的なノミの予防・駆除点下剤があります。市販品の中には効果が不安定なものもあるので私たちにご相談下さった方がよろしいかと思います。

こうして見て来ますと、この時期にはたくさんの予防処置が有り、全て一度に行なうのが困難な場合もあります。相談の上で優先順位をお付け致しますので安心して御来院下さい。

 

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2005年3月17日号
カリフォルニア州立大学セミナーから
                  帰ってきました
 

2月15日から2月25日迄、U.C.davis(カルフォルニア州立大学デイビィス校)と、ウエスタン・ベテリナリー・カンファレンスに出掛けておりました。講義は6日間にわたって、一日4時間から6時間ほど行われました。
正直を言いまして、これだけの日にちと時間を講義に集中し続けるのは、若かった以前ならともかく、時差のある脳の状態ではとても大変でした。

今回のセミナーは最新の胃腸器病、皮膚病、腫瘍の最新診断法、新しい救急医療などがテーマでした。

胃腸器病に関しては、最新の処方食の動向や、家庭食の選び方について学びました。下痢の時に良い(下痢をしない)、しかも体にも良い食べ物は何なのか?今日では大変良質なドッグ(キャット)・フードが次々に開発されて来ていますので、まずは上手にこれらを選ぶ事が大切です。しかし、消化器疾患のための市販療法食にも「限界」があるようで、手間でもやはり「良い家庭食」を飼い主さんが自ら与える時代が来ているように思います。愛犬、愛猫家の皆さんにはお忙しい毎日の中での「家庭食の食事療法」は「耳と頭の痛いお話し」かも知れません。

次のテーマの「皮膚病」は、来院される患者さんで最も多い病気の一つです。特に最近問題になっているのは「マラセジア症」(皮膚と外耳道などに起こる酵母・カビの病気)です。この対策について皮膚感染症のスペシャリストDr.P.アーキーから講義を受けました。

腫瘍学は僕が最も関心のあるテ−マです。「免疫螢光抗体法」という最新の診断技術について世界的な研究者から直接話を聞く事が出来ました。また腫瘍細胞の形態的な診断法や、最新の抗がん剤(化学療法剤)の治療法についても学びました。

救急医療は、これから夏によく起こる「熱中症」についてでした。最新治療における薬物の使い方を始めとして、各病態に対する対処法を学びました。

更にまだまだ沢山の講義が実際には有りましたが、ここでは長くなりますので省略させて頂きます。

今回の旅行中に Drカネコ、Dr.ク−ト、旧知のDr.トッド・タームズといった全米屈指の先生たちとも再会する事が出来ました。お互いの家族の様子を語り合い、今回は会うことの出来なかった多くの先生たちの消息を聞くことが出来ました。特にDr.J.J.カネコ先生の趣味が、僕と同じ「畑作り」だと聞かされて、大いに話しが弾みました。但し、先生の畑は25へクタールもある「牧草地」だそうです。 

最後に旅行期間中 皆様には御不自由をお掛けしましたが、無事に戻ってまいりました。前にも増して診断治療に専念する決意であります。何時でも動物医療、病気に関するご質問がありましたら遠慮なくお尋ねください。

なお、トピックスに今回のセミナーの写真を掲載しています。よろしかったらそちらもご覧ください。→トピックスへ

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2005年2月15日号椅子猫
歳時記・早春の季語「猫の恋」 

さて今回は、猫さんです。

猫は寒さに弱い動物ですが、紐で繋がれてはおらず、冬の間炬燵や日当など暖かい所を好むせいか、凍える猫はめずらしいです。

厳冬期から早春期にかけては、

1)下部尿路疾患 2)心筋症 3)重度な呼吸器疾患  4)発情行動による闘争や外傷 が増えて参ります。

其々の病気に就いてご説明致しましょう。

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1)下部尿路疾患

猫下部尿路疾患はご存じの方も多いかと思いますが、特にオス猫でよく見られる「おしっこの病気」です。稀にメスにも有ります。
症状は、頻繁にトイレに行く。血尿が出る。尿が出ない。(これは便秘と間違えやすいので注意)さらに重症なものでは激しい嘔吐や虚脱がみられます。
急性のものは緊急治療として「導尿」(尿路の開放)をいたします。血液検査に基いた輸液と電解質補正を致します。
原因は複雑なものが多く、詳しい稟告(りんこく・飼い主さんからお話を聞くこと)や入院検査の必要なことが一般的です。
改善後も食事、飲水、トイレ、生活環境の整備など複合的な対処が必要です。


2)心筋症

2)「心筋症」は聞き慣れない病名です。猫の心臓の筋肉を侵す病気です。この種の心臓疾患には  a)拡張型  b)肥大型 c)拘束型、 d)甲状腺機能亢進による心筋の肥厚などがあります。

猫は急に苦しがり、激しく鳴いたり、後肢が立たなくなる(動脈の血栓症のため)こともある心臓病です。一般に緊急治療をいたします。


3)重度な呼吸器疾患

気胸や膿胸、喘息症、肺炎など重度な呼吸器疾患は、どれも大変に苦しそうな様子が観られます。猫があまりに衰弱した場合、飼い主さんには一見苦しそうには見えない場合があります。
原因は、症状からだけでは判り難く迅速で慎重な診断と、入院治療が必要です。


4)発情行動による闘争や外傷

猫がケガをして来るのもこの季節です。俳句で春の季語に、「猫の恋」というのが有るほど、早春は猫の発情シーズンです。オスも、メスもかなりヒドイ喧嘩をして来ます。またケガを通して、免疫不全ウイルス(猫エイズ・猫白血病など)の感染を受けてしまうこともあります。日の長くなる春は、去勢したオス猫であっても副腎から男性ホルモンが放出されるために、時折り喧嘩に出掛けます。「ウキウキ猫の恋」は飼い主さんには大変な悩みの種です。

1月16日から2月25日までカリフォルニアのU.C.Davis(カリフォルニア州立大学デイビス校)へ行って参ります。留守にして申し訳ございませんが、また専門医から新しい知識を授かって来たいと思っています。帰院後はなお一層の努力を致しますのでお許しください。ご報告はまたその後で・・・。

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2005年1月27日号手袋
犬も凍える寒の内

暖冬とはいえ明け方の冷え込みは特に強く、夜半に目を覚ます事もしばしばです。先ずは動物たちの保温に心掛けて下さい。冬に喜ぶはずの犬達も、寒さに負けてしまうときがあります。

特に短毛種(ミニチュア・ダックス、ミニチュア・ピンシェル、ド-ベルマン・ピンシェル、パグ等)がよく凍(こご)えます。体温調節の困難な子犬や老齢動物も注意が必要です。

1)早朝/夜半から激しく震えている。
2)気が付いたら屋外で動けなくなっていた。
3)からだ全体が異常に冷たい。

といった症状が見られます。

どれも屋外に繋いだり、極めて寒い場所に動物を置いたときに発生します。屋外で飼育するきっかけは、「室内で悪戯をするので外に繋いだ。」「人間の子供が生まれたので今年から外で飼う事にした。」など色々です。

こうした「事件」の発生を避けるには、

a)犬種が屋外飼育に適しているかどうか、判断する。

b)秋口から徐々に外の寒さに慣らしてやる。
c)冬の間、屋外での保温(敷物、小屋全体を毛布で
  覆う.)などをしてあげる。

等の配慮が要ります。

猫さんに就いては次回とします。

 

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2005年1月1日号かがみもち
干支鳥

明けましておめでとうございます。
健やかに新年をお迎えのことと思います。
皆様のお蔭を持ちまして私共も無事新年を迎えることが出来ました。また今年も宜しくお願い致します。

昨年より始めましたこのホーム・ぺージ「今月の健康管理」も6回を重ねました。

お正月から大変な病気の説明ばかりでは申し訳ないので、今回はどのような子達が何時も健康でいられるのかを少しお話し致しましょう。

不思議なことに動物病院に来る動物たちの中には「健康この上無し!」といった動物がいます。一生をワクチンと定期予防、健康診断だけで終える動物が確かにいます。(其れすら受けたことが無いゾ、といった野生動物並みのスゴイ子もいます。)が、残念なことに何かにつけて病気をして来院する動物もいます。そこで、この違いが何処に有るのだろうかと考えてみますと、けして一概には言えませんが、

)最初に飼い易い丈夫な品種と元気な個体を飼うこと。

2)その動物種(犬、猫、うさぎ、ハムスター)其々に合った飼育環境を準備してあげて、飼い方の経験を各自積まれること。

3)幼仔期と老齢期にはしっかりとした世話をすること。

)伝染病ワクチンと定期の予防(フィラリア予防とノミ駆除など)、特に幼仔と老齢動物は健康診断をすること。

5)少し妙に聞えるかも知れませんが、あまり飼育に夢中になり過ぎないこと。

等が挙げられるでしょう。

とは言え、いろいろな事情で健康に育っていない動物たちへは、私たちがその子に合った適切なアドバイスを致しましょう。どうぞ飼い方や、食事、生活環境、などについても質問や相談をしてみて下さい。

私たちは、いつも皆さんと動物たちの幸せを願っています。
 では、今年も宜しくお願いいたします。

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